ドラマ「花咲舞が黙ってない」の原作!すっきりしたい!そして、理不尽と戦うあなたにオススメです!
あらすじ
もう、黙ってられないっ。
あなたたちの常識は、世間の非常識よ!
「ベテラン女子行員はコストだよ」そう、うそぶく石頭の幹部をメッタ斬るのは、若手ホープの”狂咲”こと花咲舞。トラブルを抱えた支店をまわり(=臨店)、業務改善を指導する舞は、事務と人間観察の名手。歯に衣着せぬ言動で、歪んだモラルと因習に支配されたメガバンクを蹴り上げる!
世の中どこもかしこも、黙っていられないことばかり。でも、それをいつもただせるわけじゃない……モヤモヤした思いを抱えるあなたに替わって、花咲舞がバッサリやってくれます。気持ちの晴れる、痛快度ナンバー1小説!(「BOOKS」データベースより)
半沢直樹に続いて人気の、あの花咲舞の初登場作品「不祥事」。
本作は2015年にドラマ化され好評を博した「花咲舞が黙ってない」の原作です。
このドラマのヒットを受けて、花咲舞シリーズ第2弾として小説版「花咲舞が黙ってない」が発売されることとなりました。
なので、ドラマの原作の読みたい方は、こちらでお間違いのないように!
連作短編形式をとっており、一つ一つの章自体はそれぞれ完結しています。
ただ、「7つの会議」とは異なり、全て主人公となるのは我らが跳ねっ返り娘の花咲舞。そして、彼女を"狂咲"と呼び、親しみ(警戒?)をもって支える上司・相馬。
彼らのコンビが臨店チームとして、各銀行支店の業務改善にあたります。
曲がったことは大嫌い、相手が誰であってもおかしいと思ったことを言う、そんな花咲舞の性格は当然ながら、この臨店業務においても発揮されます。
ただ、その激しい気性に目が行きがちですで、彼女は非常に優秀なテラー。
作中ではこのように評価されています。
「普通ならとうに音をあげているに違いないところなんですが、音をあげるどころかその、楽々とこなしていまして・・・・・・これはちょっとやそっとの実力じゃないなと」
仕事内容は違いますが、彼女はさながら女性版の半沢直樹。
目につく、あるいは判明していく、不誠実や不正をバッさバッさと裁きます。
その様は爽快そのもの。
そして、時には上司の相馬の立場になって「ちょっと待て狂咲」と止めたくなることもあり、時には花咲の立場になって一緒に憤慨することもあり、読んでるこちらも忙しい。
また、一章ごとに不正や不誠実を倒していくので、花咲には敵も増えていきます。
次はどうなるのかと、ワクワクを楽しめる池井戸作品となっています。
一押しのポイント
各短編で毎度読者を気持ちよくさせてくれる本作ですが、その中でも私が特に好きなのは「腐魚」です。(一部ネタバレ含みます)
東京第一銀行の重要顧客の御曹司・伊丹が、修行も兼ねて勤めている新宿支店。
そこに花咲・相馬が臨店することになるのですが、伊丹はその立場を傘にして傍若武人な振る舞いをします。読んでいてもイラッとさせられるその様と、周りがそれをきちんと咎めることをしない様子に、黙っていられるはずのない花咲舞。
そんな伊丹は過去自分のミスを指摘されて恥を書かされたという理由で、とある会社を逆恨みしています。そして、その会社が運転資金を必要とするタイミングで、通常の与信判断であれば問題のないであろう融資の稟議すらあげないという愚行を犯します。
そこで、これまで立場上強く咎めることをしてこなかったその上司が、伊丹のその不誠実な仕事で一つの会社を潰し、多くの社員を路頭に迷わすことになる可能性があったというその一事に、伊丹を殴りつけて叱責します。
私が安心したのは、その上司が"プロ"であったということ。
当然殴ってはいけません。また、普段から勤務態度の注意をする義務もあったでしょう。
ただ、何より仕事なのだから、そしてその影響を大きく持つ人を支える仕事なのだからと、譲れない一線がその人にあったことに安堵したのです。
最後に
たくさんの仕事や客に対する不誠実なサラリーマンが小説には登場します。
こうした不誠実を、花咲舞が切り倒していく様は、時代劇での大立ち回りのよう。
気持ち良いことこの上ない。
また、とある会社で一人が不誠実であるからといって、他の全員が不誠実なわけではない。花咲のように表に出さなくとも、うちに熱いプロ意識を秘めた人物もいるというのは小説ながらによかったなとしみじみ思うのでした。