ドラマ「下町ロケット」の原作!物作に関わる全ての人、必見!理想と現実に挑み続ける人々への応援歌!
あらすじ
「お前には夢があるのか? オレにはある」
研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。そんなある日、商売敵の大手メーカーから理不尽な特許侵害で訴えられる。
圧倒的な形勢不利の中で取引先を失い、資金繰りに窮する佃製作所。創業以来のピンチに、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が、佃製作所が有するある部品の特許技術に食指を伸ばしてきた。
特許を売れば窮地を脱することができる。だが、その技術には、佃の夢が詰まっていた――。
男たちの矜恃が激突する感動のエンターテインメント長編!(「BOOKS」データベースより)
池井戸節の炸裂する本作。直木賞受賞作ですが、2015年にドラマ化もされ、半沢直樹シリーズに並んでの大ヒット作となりました。
主人公の佃を社長とする佃製作所。佃がかつて宇宙科学開発機構で培った技術力を武器に、大手メーカーのユニット部品を手がけます。とはいえ、父から引き継いだ佃製作所はいつも青色吐息。作中多くの悩みの種が舞い込みます。
大手重工メーカーの帝国重工の基幹プロジェクトであるロケット開発には佃の特許技術が必要不可欠です。佃としても特許を売れば大金が流れ込みます。
ただ、佃製作所は部品メーカー。自身の夢と、会社の将来のために、部品供給をしたい佃と社員との衝突。そして、あくまでキーデバイスの内製に拘る帝国重工との鍔迫り合い。
その末に待ち受ける結果には、誰もが感嘆の吐息を漏らすことと思います。
一押しのポイント
つくづく感じたのは、池井戸氏が登場人物に決して楽をさせない著者であるということ。
苦労に次ぐ苦労、そしてまた苦労と、苦労のオンパレード。またその描写がリアルで、我々現代サラリーマンの共感をかっさらいます。
くだを巻く飲み会シーンでは、一緒になってビールを飲みたくもなりました。
吸いもしないタバコも一緒に吸いたくなりました。
そして、エンディングでは一緒に万歳したくもなりました。
本作で感じるカタルシスは、一言では言い表せないほどの大きさです。
そして、本作の完成度を圧倒的なまでに高めているのは、細部に渡るリアリティー。
銀行との関係や、技術の詳細、大企業と供給メーカーのパワーバランス、そして何よりメーカーの掲げる理想と葛藤。
大手メーカーに務める友人がいるのですが、彼は入社時に「下町ロケット」を読まされたと云います。
会社である限り、売上も利益も追わなければなりません。
ただ、メーカーの一番の存在意義は、その技術やアイデアによって、人の喜びにつなげることだと思うのです。
また、そのために他の会社を不当に貶めることがあってもなりません。
それを肝に命ずるようにと教科書代わりにもされているのでしょうね。
それから、個人的には殿村さんのキャラクターもお気に入りです。
最後に
仕事の忙しさや理不尽さにもみくちゃにされて、自分がなんのために働いているのかわからなくなってしまった。そんなあなたに、読んでいただきたい1冊です。
大きな感動とともに、自分について前向きに捉え直すきっかけができると思います。
メーカーに限らずどんな仕事でも同じかもしれませんが、何のために仕事をしているのか、今の仕事が何につながっているのか、自分の今の行動が会社外においても正しいと言えるのか。
長らく同じ職場にいると忘れがちですが、そうした視点を持ちつづけたいものです。