【おすすめの小説】空飛ぶタイヤ 池井戸潤

映画「空飛ぶタイヤ」の原作!実際の事件をモデルにしたリコール隠し事件。運送会社、メーカー、銀行、マスコミ。正義はどこに?!池井戸氏のエッセンスを詰め込んだ作品!!

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あらすじ

走行中の大型トレーラーが脱輪し、はずれたタイヤが歩道を歩く若い母親と子を直撃した。トレーラーの製造元ホープ自動車は、トレーラーを所有する赤松運送の整備不良が原因と主張するが、社長の赤松は到底納得できない。独自に真相に迫ろうとする赤松を阻む、大企業の論理に。会社の経営は混迷を極め、家族からも孤立し、絶望のどん底に堕ちた赤松に、週刊誌記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。

(「amazon」より)

 

文庫版で826頁に及ぶ長大作。

それだけの重みのあるストーリー、緻密でリアルな設定、関係人物・立場、そして、主人公の葛藤や苦悩。

読む手を止められなくなること、間違いありません。

 

本作、主人公・赤松が社長を務める赤松運送のトラックが脱輪、そして一人の尊い命を奪われてしまったところから物語は始まります。

脱輪の原因は、整備不良か、それとも車の構造的欠陥か。

財閥系の大手自動車メーカーの不正隠蔽を巡って、主人公の赤松とその会社赤松運送と、銀行、マスコミ、警察と、あらゆるジャンルの登場人物が密に絡み合って、オープニングからエンディングへ駆け抜けます。

半沢直樹シリーズ」の苦労と爽快感、「7つの会議」の謀略と隠蔽、「下町ロケット」のメーカー内部構造や銀行との関係など、彼の作品のあらゆるエッセンスが詰まった作品です。

 

 

一押しのポイント

実際の事件を元に、創り上げられた本作。

三菱自動車リコール隠し事件、脱輪事故など、元にしているものが実在するだけにその描写は非常にリアルです。

また、池井戸氏は銀行やメーカーの内部事情についても非常に詳しい作家です。

それぞれの立場の苦労や葛藤、そして策略や軋轢、まるで近くで見てきたかような生々しさが、そこにあります。

 

また、組織とその中で働くサラリーマンたちの葛藤。

不正隠蔽を図るホープ自動車の中で、カスタマーセンター課長の沢田も、次第にホープ自動車というぬるま湯を自覚していくのですが、長く組織内にいるとその組織があまりにおかしなことをしていても気がつかなくなるという危険があります。

 

沢田の妻・英理子は、こう云います。

「会社の論理っていうのは、”会社の常識、世間の非常識”と同義語じゃないの」

その物語の中で、英理子は読者のもっとも客観的な(組織からみれば理想論的な)考えを代弁しています。

彼女は後に沢田へ更にこんなことも。

「一番大切な人に嘘をついちゃだめよ。会社の場合、それは、お客さんでしょう」

読んでいても彼女の発言にはハッとさせられますね。

会社である限り、売上も利益も追わなければなりません。

ただ、メーカーの一番の存在意義は、その商品でもって人の喜びにつなげることだと思うのです。それを忘れてしまった時に、お客不在の裸の王様が出来上がってしまう。

そして、裸の王様によって作られた製品やサービスは、やっぱり客からはわかってしまうものだと思います。

彼女の仕事はラジオのDJ。久しく聞いていないラジオを聞いてみたくなりました。

 

 

最後に

長大作にも関わらず息もつかせぬ展開で、最後まで読者を引っ張ります。

最後に赤松は赤松運送はどうなるのか、沢田はどういった決断を下すのか。

池井戸氏の真骨頂が、ここにあります。

個人的には、池井戸氏の作品の中で一番完成度が高いのはこの作品だと考えています。

一押しです。