重松清氏の小説、おすすめ3選!

紹介

1963(昭和38)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。

出版社勤務を経て執筆活動に入る。1991(平成3)年、『ビフォア・ラン』(ベストセラーズ、現在は幻冬舎文庫)でデビュー。

著書は他に、『ナイフ』(新潮文庫坪田譲治文学賞)、『定年ゴジラ』(講談社文庫)、『エイジ』(新潮文庫山本周五郎賞)、『ビタミンF』(新潮文庫直木賞)、『隣人』(講談社講談社文庫で改題『世紀末の隣人』)、『流星ワゴン』(講談社文庫)、『きよしこ』(新潮文庫)、『トワイライト』(文春文庫)、『疾走』(角川文庫)、『その日のまえに』(文春文庫)、『カシオペアの丘で』(講談社文庫)、『とんび』(角川書店)、『十字架』(講談社吉川英治文学賞)など多数。

 (「amazon」著者紹介ページより)

 

重松氏の作品の魅力は何と言っても、「みんな」と「ひとり」の描写。

ひとりひとりは悪くないのに、集団になると途端に狡く残酷になったり。

必要以上に「みんな」の考えを絶対視したり、必要以上に「ひとり」を怖がったり。

集団における人間関係の息苦しさや歪みを、逃げることせず描ききります。

決して美化しません。

 

ただ、そこにある闇が深い分、その先にある光はとても眩く輝きます。

重松氏は、苦しいこともあるけれどそんなことには負けてはいられないと、立ち向かう勇気を与えてくれるのです。

 

人間関係が面倒になってしまった、周りに合わせるのが苦痛だと感じる、どうしようもなく気持ちを腐らせてしまった。

そんなあなたに冷静さと勇気を与えてくれる、重松氏の世界をお薦めします。

 

お薦めの3冊

エイジ

ぼくの名前はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレートし、ついに捕まった犯人は、同級生だった――。その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろうか?……家族や友だち、好きになった女子への思いに揺れながら成長する少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。

(「amazon」商品紹介ページより) 

 

中学生の少年・エイジの物語です。

あの頃の僕らは、とても狭い世界に生きていました。その狭さに気づけないほどに狭い場所に。

身も心も成長する時期にあり、狭い世界で自分を持て余した中学生時代。

親に、教師に、友達に、周りとの関係性を息苦しく感じたことはありませんか?

 

そんな中で、クラスメートの”タカやん”が傷害事件で逮捕されます。ただし、人を傷つけたに留まらない更に重大な事件に発展します。

”タカやん”が自転車で警棒を使って突き倒して逃げたのは、妊婦でした。

大切に大切に育んでいくことを心に決めていた大事な命は、生まれる前に奪われてしまいました。

事件は、ワイドショーで取り上げられ全国で大きく報道されます。

 

家族との関係も、友人関係も良好であった主人公・エイジですが、その頃から何かの歯車が狂い出します。むしゃくしゃすることが多くなり、周りとの関係にも事件のことにも何かが納得がいかない。

エイジは自分も実際にしないだけで、頭の中では”タカやん”がやったように、他人を傷つけることもあります。女の子に乱暴することもあります。そして同じように、タカやんと同じうに自分も女の子を好きになることがあります。

そんな自分とタカやんは、いったい何が違うんだろう。

 

この物語は、「自分」とは何かを知る物語です。

苦しいこともあるけれど、むしゃくしゃすることもあるけれど、エイジは何を得ることができたのか。どこに向かうのか。

心理描写もストーリーも非常に秀逸な本作。

中学生や高校生にも、そして反抗期・成長期を迎える子を持つ親にも、みなさんに読んでいただきたい本です。

自分だけは、自分の子だけは、なんてことはないのです。皆等しく似た悩みを抱えて生きていく、その中で違うのはどこか。

その答えが、最後にあります。

 

 きみの友だち

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。

(「BOOK」データベースより)

 

友だちの意味を巡る物語ー。

人は一人では生きていけないとはいうけれど、みんなと仲良くしなさいって大人は言っていたけれど、本当にそうなのでしょうか?

友たちがたくさんいるってそんなに大事でしょうか?

誰かと共に時間を過ごすことだけが良いことなのでしょうか?

 

中学生に高校生、大学生に、社会人。

全ての人に立ち止まって読んでいただきたい。

「みんな」に追い詰められ苦しみ、辛い想いをする必要はありません。

無理に笑って、無理に会話をする必要もありません。

本当に大事なことは何なのか、「恵美ちゃん」は無愛想に、でも優しく、教えてくれます。

 

人間関係に疲れたすべての人に力と指針を与えてくれる、そんな物語になっています。

あなたの心に大切な一冊になるのではないでしょうか。

 

疾走

孤独、祈り、暴力、セックス、殺人。誰か一緒に生きてください――。人とつながりたいと、ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた十五歳の少年のあまりにも苛烈な運命と軌跡。衝撃的な黙示録。

(「BOOK」データベースより)

重松清の衝撃のダークストーリー。

この物語はひとの心を抉ります。

苦しい描写も刺激的な描写もあります。

だから覚悟を決めて読んでほしい、これは間違いなく名作です。

 

これまで、人々の善意と悪意を描いたうえで、最後には心がポカポカと暖かくなる物語を用意してくれていた重松氏。

本作は、主人公の少年・シュウジに浴びせかけられる人の悪意や如何ともしがたい環境を、これでもかと描きます。

 

家族が犯した犯罪をきっかけに、シュウジが背負わされた孤独と苦難。

シュウジはただただ独り走ります。

誰かと繋がっていたいだけなのに、自分は何もしていないのに。

孤独感と苦難という重荷を引きずりながら走る、苦しい息遣いが終始聞こえてきます。

 

人の持つ悪意や業の深さの描き方は三島由紀夫氏の「金閣寺」を彷彿とさせます。また、少年の背負う苦難は、乃南アサ氏の「ニサッタ、ニサッタ」とも。

 

シュウジが走るその先には何があるのか。

果たして救いがあるのか、ぜひあなたの目で確かめていただきたい。

 

最後に

いかがでしょうか。

人間関係に疲れてしまった人、新生活に孤独を感じて寂しくてたまらない人、中高生のお子さんの学校生活が不安な人。

いろんな人に寄り添ってくれる重松氏の祈りがこもった珠玉の作品、おすすめです。