椎名誠氏の小説、おすすめ3選!

紹介

1944(昭和19)年、東京生れ。東京写真大学中退。流通業界誌編集長を経て、作家、エッセイスト。「本の雑誌」編集長。『さらば国分寺書店のオババ』でデビューし、その後『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』などのSF作品、『わしらは怪しい探検隊』シリーズなどの紀行エッセイ、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『哀愁の町に霧が降るのだ』『岳物語』『大きな約束』などの自伝的小説、『風のかなたのひみつ島』『全日本食えば食える図鑑』『海を見にいく』など旅と食の写真エッセイと著書多数。映画『白い馬』では、日本映画批評家大賞最優秀監督賞ほかを受賞している

(「amazon」著者紹介ページより)

 

椎名誠氏は言わずと知れた日本有数のエッセイストであり作家でしょう。

また、写真や映画などの創作活動も幅広く手掛けます。

2019年現在、御齢74歳。

作品からは今もなお精力的にご活動されている様子が伺えます。

 

椎名氏の本からは焚き火の匂いがします。

山の奥深くにある野営地で満点の星空のもと、焚き火の爆ぜる音を聞きながら、自分の過去を訥々とゆっくり話す。

作品の語りからはそのような朴訥とした男の不器用な暖かさが感じられるのです。

 

なんとなく一人でいたいとき、雨で手持ち無沙汰なとき、山やキャンプで自然に囲まれているとき。アウトドアに出かけたい時。

いろんな自分に不器用だけども優しく寄り添ってくれる物語が、ここにあります。

 

お薦め3選

そんな椎名氏の著作でとくにお薦めしたいのが、こちらです。

 

哀愁の町に霧が降るのだ

東京・江戸川区小岩の中川放水路近くにあるアパート「克美荘」。
家賃はべらぼうに安いが、昼でも太陽の光が入ることのない暗く汚い六畳の部屋で、四人の男たちの共同貧乏生活がはじまった――。
アルバイトをしながら市ヶ谷の演劇学校に通う椎名誠、大学生の沢野ひとし、司法試験合格をめざし勉強中の木村晋介、親戚が経営する会社で働くサラリーマンのイサオ
椎名誠と個性豊かな仲間たちが繰り広げる、大酒と食欲と友情と恋の日々。悲しくもバカバカしく、けれどひたむきな青春の姿を描いた傑作長編。

 (「BOOKS」データベースより)

 

本作は、酒と食欲を中心に回る、愛すべきしょうもない若者たちの物語です。

 

誰しも若かりし頃は、概しておバカなものだと思います。

ただ、本作に登場する若かりし頃の椎名氏をはじめ、その仲間たちは、輪にかけて果てしなく救いようもなくおバカなのです。

無鉄砲、即物的、浅慮、短気、いずれにも当てはまってしまうような彼ら。

ただし、彼らの貧乏な共同生活は文句なしに面白い。

 

きゃっきゃうふふの恋愛話なんてあまりないけれど、それでもこれは紛れもなく青春小説の名作です。

この小説を執筆している現在と若かりし頃を、行き来しながら展開される本作。

なんてグダグダで愉快な物語なのでしょう。

今に疲れてしまった大人たち、ちょっと昔を思い出してみませんか?

 

わしら怪しい探検隊

離島でのきつい天幕生活に挑む会「東日本何でもケトばす会」の、結成当時の行状記。椎名隊長ほか隊員たちの個性が光る。前代未聞の面白さ!

酒と食料の大移動、テント張り、かまど設置、ゴミの穴ほり、蚊の大襲来等々、夜明けとともに雑用と自然との戦いが始まり、美しい夕焼け空が疲れきった一日の終わりを告げるー。

海と冒険と仲間、椎名文学の三大要素がたのしめる「怪しい探検隊」ものの、記念すべき第一書。(角川文庫「わしらは怪しい探検隊」背表紙より)

 

野宿に、焚き火に、大宴会。

椎名氏の自伝的探検小説の一番の魅力を詰め込んだ本作。

天幕に、テント、寝袋をもって、旅に出たくなるー。

そんな作品です。

 

結婚する前の椎名氏をはじめ、ほかの作品にも登場する「東日本何でもケトばす会」、通称東ケト会の愉快な仲間たち。

 

彼ら東ケト会は本作では離れ島探検隊として登場します。舞台は、三重県沖にある神島。

ちなみに、探検隊と名付けたことについて

「特急に乗り、船に乗り、その島の人々とまじりあい、天幕の中で寝るのだから『探検隊』というのにはいささか大袈裟にすぎるのだが、・・・ここはやはり誰に文句を言われるということもないようなので、一応まあ『探検隊』というふうにいってもいいのではないか、・・・我々の集団については心情的に『探検隊的である』というふうにとらまえてくれるのではないかーという観測があるのだ」

と、ぼそぼそと言い訳しながら語ってくれています。

そんなわけで、何かとにかく探検隊なのです。

椎名氏のこの旅は、キャンプというよりは、野宿や野営といった野趣に溢れたもの。

男のロマンがここに詰まっています。

 

岳物語

 

山登りの好きな両親が山岳の岳から名付けた、シーナ家の長男・岳少年。坊主頭でプロレス技もスルドくきまり、ケンカはめっぽう強い。自分の小遣いで道具を揃え、身もココロもすっかり釣りに奪われてる元気な小学生。旅から帰って出会う息子の成長に目をみはり、悲喜こもごもの思いでそれを見つめる「おとう」・・・。これはショーネンがまだチチを見棄てていない頃の美しい親子の物語。

(「岳物語」背表紙より)

 

椎名氏とその息子・岳。

父は、いつの日か見棄てられるのだろうかと考えながらも、不器用に、ただし愛情いっぱいに、息子と寄り添います。

少年は、不器用なところ、少々喧嘩っ早いところ、アウトドアが好きなところ、全てが父親である椎名氏とそっくりです。

 

幼稚園から小学校高学年までの数年間。

人の畑からさつま芋をこれでもかと誇らしげに「収穫」してきた幼少の岳。

これまで一つも勉強のしなかったのに、釣りに目覚めてそのための勉強には熱を入れる岳。

坊主頭にされることを嫌がるようになった小学校高学年の岳。

 

屈託のない潔いこの少年の成長の日々と、父子のとてつもなく貴重でキラキラとした「普通」な交流の日々が綴られた本作。

こんな父親と息子の関係、微笑ましく羨ましいです。 

大人であれば誰でも楽しめる本作ですが、子育て中のお父さんたちにもぜひ読んでいただきたいお薦めの小説です。

 

最後に

国内外問わず様々な場所を訪れてきた椎名氏。

そして、キャンプにカヌー、釣り、登山など、アウトドアならなんでもござれ。

また、ニートにサラリーマンに、カメラマンにエッセイスト、小説家、はたまた、お父さんになったり、おじいちゃんになったり。

 

数え切れないほどの経験と想いを重ねてきた椎名氏の描く世界には、噛めば噛むほど味の出てくるスルメイカのように、奥深い味わいがあります。

本人は、へへへのへーといった様相でいかにも表っつらだけ書いていますというようなフリをするのですが、そこがまた物語に軽やかさを与えます。

たくさんの著作があるのですが、いずれも同じようにのほほんと楽しめる作品になっています。

 

ぜひ、手にとって読んでみてください。