辻村深月氏の小説、おすすめ3選!

紹介

みなさん、辻村深月氏をご存知だろうか。

1980年2月29日生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒業。

2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ロードムービー』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『V.T.R.』『光待つ場所へ』(以上、講談社)、『太陽の坐る場所』(文藝春秋)、『ふちなしのかがみ』(角川書店)など。

2010年に『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』が第142回直木賞候補作となる。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。(「amazon」より)

これまで数々の「すこし不思議な」物語を、世に送り出してきた辻村氏。

時に心をときめかせ、時に心に棘を刺し、時に心を優しさで一杯にさせる、そんな魔力を持っています。

特筆すべきは彼女の的確な心理描写力。

人の弱さや醜さ、妥協や逃げなどの描写に、私は何度物語の途中で手を止めます。

これは当然つまらないからではなく、あまりに的確だから。

物語が鏡のように、あなたはどうだあなたはどうだ、と問いかけてくるからです。

 

お薦め3選

そんな、読者を映し出す「すこし不思議な」物語を紹介。

 

凍りのくじら

高校2年、芦沢理帆子――。「家に帰れば、本が読めるから」誰と話しても、本気で楽しいと思えたことがなかった。あの光と出会うまでは。

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき――。

( 「BOOK」データベースより)

 

辻村深月氏の小説でまず最初に読んでほしい「凍りのくじら」。

「すこし不思議な」物語は、ここからスタートしました。

 

主人公・理帆子は藤子F不二雄氏のことを藤子先生と呼び、誰もが知るこのアニメや漫画をこよなく敬愛する、すこし変わった女子高生です。

自分の特別さを疑わなかった青春時代。

その度合いに差はあれど、誰もが通る道。ただし、本人たちの切迫した気持ちは彼らだけのもの。

本作はそうしたその時期特有の心の揺れを鋭く的確に表現した作品です。

 

そして、それらが高じて引き起こされることとなる事件とはー。

これは青春時代の物語ですが、青春小説ではありません。

ヒューマンドラマでもあり、ミステリーでもあり、サスペンスでもあります。

心に刺さる彼女の物語、必見です。

 

ぼくのメジャースプーン

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。

(「BOOK」データベースより)

 

本作の主人公は、小学生の「ぼく」。

 

他人を言葉で縛る力。「『何か』をしなければ『ひどいこと』が起こる」と相手に囁くことで、相手に「何か」と「ひどいこと」のどちらかを選択をさせる、主人公はそんな不思議な力を持っています。

そして、文庫のカバー表紙は、柔らかく暖かみのある絵柄。

これまでも「すこし不思議な」物語を展開してきた作者ですが、今回はさらにSFライクでポップなストーリーを想像して読み始めました。

 

ところが、読み進めるごとにその想像は覆されていきます。

小学校で起きた凄惨な事件、そして「 ぼく」の大切な友人の心に刻まれた痛ましい傷。

とても読むのが苦しいのです。

これを起こした犯人に対して、そして傷ついた友人に、「ぼく」ができることは何なのか。「復讐」とは何なのか、「償い」とは何なのかーー。

これを読むみなさんは、一生懸命になって「ぼく」と一緒にエンディングに向かって悩み続けることになるかと思います。

その結果がどうなるのか、ぜひ最後まで読んでいただきたいのです。

 

スロウハイツの神様

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだーー

あの事件から10年。
アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。
夢を語り、物語を作る。
好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。
空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。

 

辻村氏の5作品目にあたる本作は、文庫版で上下2巻にわたる長編。

これまでと趣が異なり、「すこし不思議な」物語ではありません。

まっすぐに前を見つめて、まっすぐに歩もうとする、「ひと」のお話です。

舞台は、スロウハイツというアパート。

あの手塚治虫氏や藤子・F・不二雄氏などが創作活動で同居していた「トキワ荘」のように、脚本家や小説家、漫画家、映画監督などのクリエイターを目指す若者たちが、ハウスシェアをして共に暮らします。

そんな彼らが心を削って、何を成し遂げるのか。その過程で何を思うのか。

生きていくって簡単ではないけれど、夢を叶える過程もすぐには見つからないけれど、どれも自分のための道。

彼ら一人一人の生き様に、胸を打たれてみてください。

 

なお、辻村氏の著作で、映画化やドラマ化されるのが最も早いのはこの小説なのではないかと予測しています。また、「凍りのくじら」の芦沢理帆子が登場するのも、ファンにとっては嬉しいところです。

 

最後に

座禅で肩を打たれるときのように、辻村作品の心の描写は自らの心を整える効果があります。

新たな刺激や価値観が欲しいとき、あるいは、自分の心の中心がわからなくなったとき、ここに戻ってみてはいかがでしょう。

そして、彼女が齢をおうごとに、彼女の経験や知見がそのまま小説に反映されていくところも、今後の楽しみ方の一つかなと思います。