友だちってなんだろう?みんなってなんだろう?学生に社会人、周りとの関係に悩むあらゆるに人に読んでいただきたい、重松氏の傑作です!
あらすじ
わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
(「BOOK」データベースより)
友だちの意味を巡る物語ー。
人は一人では生きていけないとはいうけれど、みんなと仲良くしなさいって大人は言っていたけれど、本当にそうなのでしょうか?
友たちがたくさんいるってそんなに大事でしょうか?
誰かと共に時間を過ごすことだけが良いことなのでしょうか?
中学生に高校生、大学生に、社会人。
全ての人に立ち止まって読んでいただきたい。
「みんな」に追い詰められ苦しみ、辛い想いをする必要はありません。
無理に笑って、無理に会話をする必要もありません。
本当に大事なことは何なのか、「恵美ちゃん」は無愛想に、でも優しく、教えてくれます。
人間関係に疲れたすべての人に力と指針を与えてくれる、そんな物語になっています。
あなたの心に大切な一冊になるのではないでしょうか。
一押しのポイント
交通事故で片足の膝下が永遠に動かなくなった少女、恵美ちゃん。
事故は、下校時の急な雨に、恵美ちゃんだけが持っていた傘に”友達”が集まってきて、煩わしくなったて傘から出た時に、起こりました。
彼女は、その友達数人を弾劾したことで、友達の全てを失います。
そこから、彼女は「みんな」を信じることをやめました。
きみは「みんな」を信じないし、頼らない。一人ひとりの子悪くない。でも、その子が「みんな」の中にいるかぎり、きみは笑顔を向けない。
物語は、彼女と彼女の親友である由香ちゃんを中心として、たくさんの個性を持った家族やクラスメートが1話ずつの主人公を務める連作長編。
「友だち」とは何なのか、「みんな」って何なのか。
彼らが悩んで苦しんで、自分のひとつの答えを見つけるたびに、心の重石をひとつ下ろしていくような心持ちになります。
一押しは、みんなから面白がられるのが好きで、クラスの”有力者”の太鼓持ちの、堀田ちゃん。
八方美人で弱虫のこのタイプ、クラスに一人はいますよね。
友人グループ内の”戦争”に、平和主義で日和見主義な堀田ちゃんも巻き込まれ、ひょんなことから”戦争”は、「みんな」v.s.自分一人の構図に。
外された堀田ちゃんは、恵美ちゃんと由香ちゃんと久しぶりに話しますが、そこでも相手を喜ばせようと芸をしてみせます。
恵美ちゃんはこれをバッサリ。
「さっきの芸、全然つまんなかったよ・・・
ヘたっていうか、おもしろくなかった、なんか嫌だった・・・
自分がつまんないんだったら、やめちゃえばいいのに」
その後、案外簡単に”戦争”は終結します。それは、他の”戦争”が発生したから。
そこで、堀田ちゃんはこう思うわけです。
みんな、くっついていても、ほんとうは「ぼっち」なんだと思う。
みんなぼっちーひとりぼっちより寂しいかもしれない、これ。
「みんなぼっち」とは重松氏の造語です。
「みんなそう言っている」って、みんなって誰のことだろう。
そんなことを考えたことはありませんか?
「みんなそう言っている」という言葉は、実は「自分の周りにいる数人はそう言っていると自分は認識していて、また、それに従わせたい」というのが正確なところです。
「みんな」に隠れて、あるいは「みんな」の目を気にして、でもそれぞれが実は自分のことばかり考えていて。そのことを、みんなといるのに寂しく心が通わない「みんなぼっち」と表現する重松氏の言葉選びのセンスに脱帽です
最後に
大切に思う人と一緒にいること、相手が喜んでくれることをすること、いずれも素敵なことだと思います。その相手を「友だち」と呼ぶことも素敵だと思います。
ただ、自分は自分、他人は他人です。
「みんな」がではなく、自分がこうしたい、こうしてほしいと堂々と言えるようにいたいですね。
恵美ちゃんのように、強くありたいものです。